ヨガとは何か。
本来ヨガとは、心のあり方を追求し、 様々な煩悩・こころと体の不安や不調などの悩みや 欲望、怒り、悲しみ、憎しみ、妬みなど、 「百八煩悩」といわれる心の状態を解放するのが目的でした。そのような人間が抱えている苦悩や苦痛から解放されるための 心の働きを止滅させるのがヨガの修法であります。その段階的修法としてパタンジャリは『ヨーガ・スートラ』に8段階のヨガの修法を説いています。
しかし、現在は体の健康だけを重視したハタヨガ(今、流行のホットヨガ、パワーヨガ)だけが本来のヨガだと思って誤解している初心者は多いようです。ハタヨガは、ヨガ修法の中では基礎の部分です。 それ以前にはヤマ、ニヤマという心の規範を認識することが重要です。ヨガという言葉を口にする以上、ヤマ、ニヤマについて知っておく必要があります。ヤマとは、してはいけないこと。ヨガの実修にあたって人間として最低限守らなくては ならない道徳的規範やモラルを説いています。
ヤマとは
1.不傷害・殺生をしない。
2.嘘をつかない・真実を語る。
3.不盗・盗まない。
4.不淫・乱れない欲望。
5.不当に財物を所有しない
ニヤマとは、なすべきこと。
1.心身の清浄。
2.満足する。
3.修行・減食・節食をする。
4.師から与えられた聖音・ァオームのマントラを唱行・書行し学修する。
5.自己の中に存在する梵性・ブラフマン、神性・イーシュバラを崇拝する心を持つ。個人的規律を遵守する。
そして、信じ尊敬する師の教えに従って実修を積み重ね、サマーディ・三昧、悟りに到達することがヨガの本質でもあります。もともとヨガは、自然の驚異や死への不安・恐怖心を抑制する方法として考えられた修法です。 古代インドのヨガ修行者であるリシやムニたちは、ラージャヨガ・座法を組んで、瞑想していました。瞑想することによって、外界・世界に向かっていた不安や恐怖の意識を打ち消していたのです。太陽が沈み夕闇から暗黒の夜がやってきて、不安や恐怖が襲って来ます。やがて東の空がしらじらと明るくなると、 太陽が顔をのぞかせて人々は安心して一日の生活を始めていたのでしょう。夏・雨期になると、蒸し暑く、気温は上昇し、 日中、外ではとても生活できる環境ではなかったのです。暑さをさけるため、室内に素焼きのつぼを置いて水を入れ、 その周りで瞑想していたのです。 「心頭滅却」し、暑さを忘れていたようです。古代のヨガは、ラージャヨガが中心でした。
後代になると、ハタヨガ、身体的な修法を中心として盛んに実修されるようになりました。ハタとは「力を加える」こと、「力づく」との意味であり、身体をコントロールして健全にするヨガのことです。
ヨガの最終段階は、ラージャヨガ(王のヨガ)と呼ばれる心のヨガです。三昧(サマーディ)、悟りの境地に到達することですが、その前に体の不調と心の不調を癒さないと、凝念(ダーラナー)や瞑想(ディヤーナ)、 そして三昧(サマーディ)へと連なる意識の深化はできません。そのために体を健全な状態へと導くのがハタヨガです。
心の不安や不調を整え純化するのがラージャヨガです。それよりさらに深い意識・魂を純化するための特別集中修法・綜制(サムヤマ)へと連なる意識状態に没入するのがクンダリニーヨガです。ハタヨガでは呼吸を整え、肺に溜まった体の毒素を排除する呼吸法や、クリヤヨガ、シャトカルマヨガの実修が不可欠です。

食事の量や方法についてもヨガ食は大切です。一般的にはあまり食事の仕方や献立の指導は行われていません。しかし、ヨガ食については、大変重要な修法の一つです。食生活環境など、国や民族間での食生活の問題がありますが、 基本的には菜食が中心となります。日本では「腹八分は医者知らず」の例えがあります。ヨガでは「腹半分であとは水で満たす」とあります。食べすぎはヨガの実修に良くありません。
インドのリシケシにいた有名なヨガ導師は、体重90kgの肥満になり、その後糖尿病で亡くなりました。ヨガの導師であっても食べ過ぎると病気になります。日本の健康長寿者は小食で、根菜や野菜を中心に豆類や 二次加工品の豆腐、ゆば、魚介類などを摂っているようです。日本人は昔から魚を食して来た民族ですから、少々の魚は食べてもいいでしょう。インドのヨガ行者は、ことに肉類(牛、豚、鶏)などは食べていません。動物性の蛋白質を摂り過ぎると内臓、とくに腎臓などに負担がかかりますので気をつけましょう。特に、中年を過ぎると、尿酸血症になり、痛風を患うこともあります。果実や生野菜、温野菜、海草、小魚、豆類をバランス良く食してください。
ヨガ食については、次のような基本的な考え方があります。「宵越しの古い食物は食べてはいけない」といわれています。ヨガは、体と心と魂について、科学的に解明するための教義と修法があります。この技法は師から口授口伝による指導が不可欠ですので経典や本には詳しくは書かれていません。筆者は著書『ヨガ健康学論』『ヨガ修法学論』にある程度詳しく書いていますのでご覧下さい。科学的な資料としては、『川上光正 共同研究論文集 ヨガマスターの瞑想における脳内検証』に当たって下さい。